コロナ禍でも年間販売数100万個突破!
話題の新定番京都みやげ「京フランス」開発秘話

2022.09.01

コロナ禍で観光客が減少した京都で、売上が大きく伸びている京都みやげ「京フランス」。会社史上一番の大ヒット商品となった、見た目ユニークな2色のフィナンシェに込められた想いと開発秘話をお届けします。

株式会社普門庵
「京フランス」開発責任者

誕生のきっかけ

「長く愛される新しい京都みやげを作りたい。」そんな思いを抱いていた2018年、当年が「京都・パリ友情盟約(姉妹都市)締結60周年」の節目の年である事を知りました。
「日仏最高合作のお菓子を作りたい。」京都もパリも文化の粋、その掛け算のお菓子を作れないかという思いが沸々と湧いてきました。

テーマは「京都の薫るフランス菓子」。そこで選んだのがフィナンシェでした。
フィナンシェはパリ発祥でフランスで長く愛されており、日本人にも馴染みのあるお菓子です。
京都を象徴する抹茶とも相性が良い為、誰もが美味しいと認める本物の抹茶フィナンシェを目指して試作を開始。そこからさまざまな挑戦が始まりました。

2つの出逢い

「一流のパティシエに本場フランスのフィナンシェの作り方を教えてもらいたい。」私は洋菓子の知見が浅く、洋菓子業界の人脈もほとんどありませんでしたが、ありとあらゆる人脈をたどっていくと、2000年にM.O.F(フランス国家最優秀職人章)を受章したパスカル・モリネス氏とご縁を頂きました。フランス菓子職人の最高峰レベルは、M.O.Fパティシエ。フランス文化の最も優れた継承者として高度な技術を持つ職人に授与される称号で、その栄誉は日本の人間国宝に相当すると称されます。
パスカル氏は、M.O.Fを受章しただけではなく、世界で名高いパティシエ・コンクール「クープ・デュ・モンド」で優勝し、同大会の大会組織委員長も歴任した超一流の人物です。言葉や距離の壁はありましたが、フランス語の通訳を交え、海を越えたやり取りが始まりました。

一方、最高レベルの抹茶を求めていくと、酢田恭行氏にお引き合わせ頂くことができました。茶葉の選定とブレンドを行い、表現したい茶の味を作り出す一流の茶師で、茶の鑑識眼の技量を争う大会で最高段位の十段に認定された人物です。茶師十段は歴代で十数名しかいません。

フランス菓子職人と茶師、その最高位を極めた2人との出逢いにより、日仏最高合作のフィナンシェ誕生への期待感が一気に高まりました。

)フランス国家最優秀職人章(M.O.F)パスカル・モリネス氏
)全国茶審査技術十段 酢田恭行氏

2つの最高素材

「フィナンシェの味はバターで決まる。」パスカル氏のアドバイスを受け、フランス産高級バター「イズニーバター」を使う事に決めました。酪農大国フランスの中でも良質なミルクの産地として知られる、イズニーサントメール酪農協同組合のミルクで作られた発酵バターで、濃厚なコクと上品な味わいが特長です。イズニーバターを輸入している会社を探し当て、何とか入手する事ができました。

酢田氏からご提案いただいた京都産高級宇治抹茶とともに、いよいよ試作開始。美味しい抹茶フィナンシェを作ることはできましたが、抹茶を加えるとせっかくのバターの香りがどうしても弱くなってしまいます。「バターの風味を生かせる香り高い抹茶を作れませんか?」無理難題を承知で酢田氏にお願いしました。

何度も試作を重ねた末にご提案いただいたのが、フィナンシェとの相性を考えて作られた京都産特選宇治抹茶「祥楽」でした。色合いの良い希少品種を中心とした一番摘み抹茶を厳選し、低温熟成と石臼引きにより仕上げた抹茶で、上品で深みのある味わいが特長です。試作したところ、「バターとのマリアージュがうまく行っている。」とパスカル氏からお褒めの言葉をいただきました。
フランス産「イズニーバター」と京都産特選宇治抹茶「祥楽」。日仏最高合作にふさわしい2つの素材を用意することができました。

焦がしバターを作る、パスカル・モリネス氏

本場フランス仕立てのバターフィナンシェに感動

「バターの焦がし方がポイント。」パスカル氏に来日して頂き、まずは定番のバターフィナンシェの製法を直接指導して頂きました。入念に温度を測りながら焦がしバターを作って生地に混ぜ込み、その生地を手際よくオーブンで焼き上げていきます。そのバターフィナンシェがとても美味しくて感動しました。

「この味も伝えたい。」当初は抹茶フィナンシェのみを考えていましたが、本場フランス仕立てのバターフィナンシェと特選抹茶のフィナンシェ。2つの美味しさを兼ね備えたフィナンシェを作れないか、と考えるようになりました。2種類の味を詰合せにする事は容易でしたが、「それではありきたりになってしまう・・・」日仏最高合作のフィナンシェとしてのオリジナリティを出す方法を悩む日々が続きました。

焦がしバターを作る、パスカル・モリネス氏

唯一無二の2色フィナンシェ「京フランス」の誕生

「抹茶とバターに分かれた2色のフィナンシェを作れないか。」試行錯誤の末に思いついたアイデアでした。しかし、世の中で見た事が無く、機械メーカーに相談しても実現不可能との回答ばかりでした。

「我々で開発するしかない。」抹茶とバターの生地を半分ずつ手作業で充填してみますが、生地が混ざったり、半分に分かれなかったり、と上手くいきません。そこで生地を充填する為の充填装置をオリジナルで改造し、何度も試作を重ねた結果、2色の生地が混ざらずきれいに分かれるように充填する事ができました。
抹茶とバターの生地が半分ずつに分かれたフィナンシェはまさに一心同体。企画の原点である「京都・パリ友情盟約(姉妹都市)締結60周年」にふさわしい、日仏の絆を象徴するような唯一無二の2色フィナンシェが誕生した瞬間でした。

京都とパリ、日本とフランスの架け橋となりますように・・・
そんな思いを込めて「京フランス」と命名しました。

(左)全国茶審査技術十段 酢田恭行氏
(右)フランス国家最優秀職人章(M.O.F)パスカル・モリネス氏

コロナ禍でも順調に売上が伸び、年間販売数100万個突破でV字回復

2019年1月25日の発売後、「美味しい!」と評判を呼び、売上は順調に伸びましたが、一年後の2020年に始まった新型コロナウイルス感染症拡大により、京都観光客は激減。会社存続が危ぶまれるほど厳しい状況に陥りました。しかし、通信販売でわざわざお買い求めいただくお客様やリピーターの方が徐々に増え、2022年8月、京フランスの年間販売数は100万個を突破。コロナ禍前よりも販売数を伸ばし、会社史上一番の大ヒット商品となり、売上V字回復を果たすことができました。

人と人との心の架け橋になってほしい

コロナ禍はまだ先が見通せず、人と人との交流が制限されている世の中ですが、おみやげを地元に持ち帰った事をきっかけに、会話や旅の思い出を共有する機会となれば嬉しく思います。

京都とパリ、日本とフランスの架け橋となりますように・・・
そんな思いを込めて命名した「京フランス」が、人と人との心の架け橋になることを心から願っています。

(左)フランス国家最優秀職人章(M.O.F)パスカル・モリネス氏
(右)全国茶審査技術十段 酢田恭行氏

京フランスバナー